何に飽きたか退屈したのか、愛が足りないと言って唐突に騒ぎ出すから、はいはいと額にキスしてやったら静かにはなったのだけど、なんだかじっとりした目でこっちを見つめて愛が足りねえ…と、さっきよりも重々しい口調で言ってくる。「なんでですか」「だって、軽い、軽すぎるだろ」「こんな俺にしたのは誰だと思ってるんです」 本当にほんとうの最初はいくら有効だとわかってたとしてもはずかしくってとてもできなかった。それがいつのまにだか当たり前になり、それに気づいて愕然としたりもしたものだけど、最近ではそれすらなくなって、爪を切ることとかと同じ感じになってきている。やらなきゃ鬱陶しいけどめんどいけど、まあ大したことではないけど、みたいな。そんな。 陛下は価格破壊がなんとかかんとかぶつぶつ言っていたけれど、仕様がない、許容しようと肩を落とした。だから、許容も何も、あなたのせいですって。慣れきるほどあやされるほどふざけたり拗ねたり日常的にしてないでください… 「ほら、じゃあ俺の愛もやるよ」 ぐるぐると考えていたら腕を引かれてバランスが崩れ、引き寄せられる。やばい、される、と覚悟しかけたが、「はい」 手のひらを開けられ、見慣れたそれをぽんと乗せられただけだった。 「…オレンジグミ」 「ん?みかんがきらいなんだったか? レモンじゃなかったか」 「はあ、大丈夫ですけども」 だけどなんでグミ? そんな思いをこめて手のひらと交互に見ていると、いいよ、今食べても、と、鷹揚なふうに言う陛下。いやそうじゃなくて。 「陛下の愛って250ガルドなんですね」 「お値段据え置きでお求め易かろう。TPも回復できる」 体温を吸ったグミは大分ぬるくなっている。口の中に放り込んで、お求めやすくない愛もほしいですけどねえとガイはつぶやいた。酸味はあまりない。でも、特に疲れているわけじゃないときの甘さは喉を焼く。何か飲みたいなと思い、ふと妙な間に気づいて目の前の人を見やった。なぜだか何かすっぱそうな顔をして…ああ、違うな、唇噛んでるのか? …なんで? しかし問いかけるよりも早く、ピオニーの方が口を開いた。 「お前って飴とか舐める派?」 「は?」 「グミ、噛んでないから」 「ああ…いや別に、その時々ですけど…」 「俺はグミとかマシュマロとかはすぐ噛むなー」 「そうですか。でもすぐに噛んじゃうとちょっともったいない気分になりません? …いや今は、せっかくあなたの愛なんだから、味わおうと思って、それで」 それでもう今度は堪えきれず、ピオニーは顔を赤くしたので、おお、ちょっと珍しい、とガイは思った。それから(…やばいな、) と思った。舌に溶けてゆく彼の愛は、酸味の気配を遠く含んで、甘い。 20110830 多分たまたまポケットにあったとかそんな 愛 |